ある日の寿司屋にて。
2024年3月12日
弊社業務の日記です。
※このブログは、某グルメレビューサイトに掲載予定の記事を大幅加筆・修正したものとなります。
二月某日。
近頃の天気予報は信用ならない。
冬真っ最中というのに日中は暖かく、夜は寒い。
兎にも角にも気温差が海に面している地域と思えないほど激しい。
なおかつ天候は変わりやすく、太古の昔から「女心は秋の空」というが、今は冬だ。
寒暖差と北風が以前より老体に堪える・・・。
(痛風の由来が「風が吹くだけで痛む」らしいのだが、加齢による関節の違和感は全人類の共通認識であるためこれを「痛風」と命名しても構わないのではないかと思う今日この頃だ。)
建築業、運送業界は2024年問題と称して労働環境の改善を試みている(らしい)のだが、
弊社内での変化は未だに見られない。
どの業界も人手不足かつ少子化が加速してることにより、若年層という少ない牌の取り合いがなされる現状。
ヤフーや朝刊によると求職中の人間にとっての建築業界の需要は賃上げだけでは解決できない問題らしい。
とはいえ根本解決は国任せでなく各々(会社単位?)で解決しなければならない。
この先、人口減少しようが建築が0になることはない。
ゆえに、我々も必要不可欠な職業の一つである。
週末に放映してるワイドショーではエッセンシャルワーカーといえば医療従事者や介護士、インフラを支える職種が挙げられるが、
建築業界はその例に漏れるのだろうか。
・・・と。
仕事が終わり、そそくさとバスに乗る。
予約した店に向かう車中、日が沈み出した。
その時、車窓は小生の鏡となった。
特にすることもないので「鏡」に映る仏頂面を見ると、ふと気づく。
『最近小ジワが増えたなぁ』
「鏡」の背景の建物が後ろに、無慈悲に、通り過ぎてゆくのを眺め、時間の流れに誰も逆らえないことを感じる。
バスに揺られると何故か物思いに耽ってしまう。
些細なことやどうでもいいことが思い浮かんでは消えて、思い浮かんでは消えていく。
すっと消える鏡。
取って代わった、夜の賑やかな灯り達。
目的地は近い。
話が長くなった。
閑話休題。
片町という繁華街の喧騒から離れた、川のせせらぎが微かに聞こえる小道を進む。
『本当にこんなところに美味い寿司屋があるのか?』
と不安になりながらも暗がりの中を、進むと見えてきた。
風情漂う犀川沿いの一画にある、寿司の銘店「きく家(きくや)」。
かつては片町に店舗があったそうだが
今(2024年2月現在)は中川除町に店を構えるようになった。
店内に入ると8席のL字カウンター。
この手の店は大将の覇気によって客が怖気を震う場面が多々あるのだが、「きく家」は違った。
スタッフと客との終始和やかな雰囲気・・・かといって緩すぎるわけではなく、ラグジュアリーな空間と時間は常に流れてるため、今後あらゆるシーンで訪れたくなる。
そんなこと考えていると料理がカウンター台に並んだ。
刺身だ。
タコ、鰯、めじ鮪、シマアジ、そしてバイ貝。
タコは紫蘇の花がのっていて吸盤が捌かれていてる。
それ故、初見ではそれがタコだと気づきにくい。
普段より少なめに醤油を付け、口に運ぶ。
吸盤がないタコは噛みごたえよりも水水しさが強調されて感じた。
そこに紫蘇の花の謙虚で爽やかな風味が口の中に広がる。
「美味い。」
自然と口が綻ぶ。
つい1時間前まで苦悶の表情を浮かべながら仕事をしていたとは考えられない。
自分の顔を確認はできなかったが、きっとだらしのない表情を浮かべていたはずだ。
それを隠すかのようにきめ細かな泡が乗ったビールを流し込む。
これまた美味い。
大将は客と適度に会話を楽しみつつ、魚を捌きつつ寿司の段取りをしていく。
コースの中で個人的に特筆すべきはヤリイカ。
画像のように包丁が入っており、切れ目に醤油が載っている。
文字では形容しにくいのだが、控えめのシャリと醤油が組み合わさり、濃い味を感じないはずのイカに旨味を感じた。
一部の料理人は「料理の大半は素材で決まる」というが、イカに関しては技術力(スキル)も重要なのではないか・・・。
と素人ですら大将の技を感じ取れる一貫だった。
その後もクルマダイ、カジキ三角、カワハギ、サユリ、マグロ漬け、中トロ、ガスエビ、クエ、ウニ、毛蟹、初鰹、ホッキ貝、ノドグロ、ウナギ、ヒラメと続いていく。
女性や子どもなら2件目に行かなくて済むくらいの量の寿司が提供されるので、味と店の質だけでなく胃袋の満足感も満たされるコース内容だ。
良い寿司屋だけでなく、ハイブランドの価格設定は店の雰囲気や接客、そしてサービスが提供されるまでの時間、すべてに非日常を感じ取れるようになっていることは言うまでもない。
ここも例外でなく、寿司に当たる光の塩梅や店主との距離感など・・・私が気付けない様々な「仕掛け」が施されているはずだ。
それらを加味すると金額は高くない設定である。
午後6時と8時からの2部制で私は6時からだった。
日本酒を愉しんだ為、ほろ酔いで店を出る。
朧げに見える街の灯りは、見慣れたはずの街並みだが何故か新鮮味を感じた。
かつて堀江貴文氏は「寿司屋の修行に10年も要らない」という趣旨の発言をした。
私はその発言に対し、激しく同意していた。
ただでさえ人材不足の飲食業界。
その中で10年も修行して一人前だなんて、若者は耐えられない。
そのような需要に合わせて短期養成できる寿司の専門学校できた。
その卒業生が中心に営んでいる寿司屋がミシュランのビブグルマンに載ったことも話題だ。
今どきそんな「伝統」をいつまでも守っている寿司職人なんて・・・と。
この日まではそう思っていた。
しかし長年の鍛錬から成せる技は短期では習得できるのだろうか。
人を感動させるサービスと味。
物事はすぐには成果や結果が出ないのは、経験則でわかる。
かといってただただなんでも時間をかければいいなんてことはない。
・・・
『また車中で下らないことを考えてしまった。』
今日は疲れたはずなのに、脳内では多弁で饒舌だ。
小生の「鏡」を見ると頬が緩んでいた。
『・・・情けない』
心の充電は最大になった。
明日からまた頑張れそうだ。
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